"You come to learn to inhibit and to direct your activity. You learn, first, to inhibit the habitual reaction to certain classes of stimuli, and second, to direct yourself consciously in such a way as to affect certain muscular pulls, which processes bring about a new reaction to these stimuli, Boiled down, it all comes to inhibiting a particular reaction to a given stimulus. But no one will see it that way. They will see it as getting in and out of a chair the right way. It is nothing of the kind. It is that a pupil decides what he will or will not consent to do."
F. M. Alexander
アレクサンダーテクニークとは?
私たちは「自分がいつもしていること」で出来ています。
しかし、意外に思うかもしれませんが、私たちはこの「いつもしていること」の多くに全く気がついていません。普段の生活で抱えている問題の多くの原因が実はこの「いつもしていること」にあるかもしれないにもかかわらず…
アレクサンダーテクニークの根幹にあるのは、問題の原因となっているこれまで気がついていなかった「いつもしていること」に目を向け、それをやめる、という考え方です。
アレクサンダーテクニークのレッスンでは、問題の原因である「いつもしていること(癖・習慣)」に気がつき、それをやめるためのお手伝いをいたします。
問題の原因である習慣は、動きや行動に関わるものかもしれないし、考え方やものの捉え方、情動的なものかもしれません。これら習慣の多くは無意識のうちにいつの間にか身についたものです。「いつもしている」ことだからこそ自分にとっては当たり前で、自分一人で気がつくのは簡単ではありません。
レッスンでは、アレクサンダーテクニーク教師とともに、まずは表層に表れている問題に取り組み、徐々に深層にある問題の本質へと近づいていくことで、抱えている問題を改善の糸口に気がつき、より快適な生活を送るためのサポートをいたします。
アレクサンダーテクニークの歴史
アレクサンダーテクニークの始まり
フレデリック・マティアス・アレクサンダーは1869年1月20日に生まれ、タスマニア島(オーストラリア)の北西海岸に位置するヴィンヤードという小さな町で育ちました。アレクサンダーは呼吸器系の病気に苦しむ非常に病弱な子供でした。虚弱体質のために幼い頃から学校に通うことができず、夜間に地元の学校の先生から個人指導を受けていました。10代になると健康状態は徐々に上向きになり、アマチュア演劇に参加するようにもなりました。
20歳の時にメルボルンへわたり、約3ヵ月の間、演劇やコンサートに行き、アートギャラリーを訪れたりと様々な芸術に触れる経験をします。この経験がアレクサンダーの心に深い印象を残し、彼は俳優・朗読家になるための訓練を受けることを固く決意したのでした。
これら声と呼吸の問題を解決するため、アレクサンダーは医師やボイストレーナーに相談し、多くのアドバイスを受けたものの、特に改善することはなく、それどころか状況はさらに悪化を続けます。数年後にはとうとう声がほとんど出なくなり、公演をを終えるのがやっととう状態にまでなってしまいました。当時はまだマイクもスピーカーもありません。声がかすれる、声が出なくなるということは、俳優・朗唱家としてのキャリアの危機に直結します。アレクサンダーはこの事実を前にし、ますます不安を募らせていきました。
このため、アレクサンダーは医師にもう一度相談してみようとと決断します。医師は改めて喉を診察し、公演前の2週間、声をなるべく使わずに完全に休ませれば、声は元に戻ると請け負います。アレクサンダーはこの医師のアドバイスに従うことにします。そうして2週間過ごした後、アレクサンダーは公演のステージに立ちます。公演の冒頭、アレクサンダーの声は全くかすれておらず、元の自分の声が出せていました。しかし、演奏の途中からアレクサンダーの声に嗄れが戻ってきて、その状態は悪化の一途を辿ります。公演が終わる頃には声を出すのもやっとという状態でした。
これを読んでいる方の中には、自分には声の不調など無いからアレクサンダーテクニークは特に関係ないと思い始めている方もいるかもしれません。しかし、アレクサンダーの論理は、首・肩・腰など私たちが抱えているほとんどすべての不調や悩みに適用できるものです。例えば、ガーデニングをする前は腰の痛みなどなかったのに、ガーデニングをした後に腰に痛みが出たとしたら、それはガーデニングや草むしりをしているときに体に過度の負担をかけていたことが問題の根本的な原因であるはずです。どのような身体の不調であっても、その背景には原因があり、それが取り除かれれば痛みや不快感は徐々に消えていくはずです。
使い方が働き方に影響を与える
自分の問題の原因を発見するため、アレクサンダーは鏡を使うことにしました。鏡の前に立ち、普段の声で話すときと演技をしているときの自分を観察したのです。そうして、アレクサンダーは両者の間に違いを見つけます。最終的に、その違いは、演技中に声を出しているときに、頭を後ろに引いている、喉頭を圧迫している、口から空気を吸っている、という3つの特徴的な傾向に集約できることに気がつきます。この時点まで、アレクサンダーはこれらの癖に全く気がついていませんでした。これに気がついてから改めて通常の話し方を観察してみると、同じ傾向は存在するが、その程度は明らかに小さいことにも気がつきます。また、この3つの傾向はアレクサンダーが特に力を込めてセリフを言おうとするときにより顕著になることにも気がつきました。この発見はアレクサンダーにとってとても大きなものであり、彼を更なる探求へと駆り立てました。なぜなら、演技をしている時に自分が「していること」と声が出なくなったことの間にはつながりがある、という彼がもともと持っていた考えを裏付けるものだったからです。自分が無意識のうちに自分の問題を引き起こしている、アレクサンダーは初めてこの事実に気づいたのです。
アレクサンダーにとってこれは非常に重要な発見でした。問題を引き起こしている3つの傾向が表れることを防ぐことで、声や呼吸の問題を改善へと向かわせることができたからです。これはつまり、体の使い方を変えることが体の働き方に影響を与えている、ということを意味します。間違った使い方をしていたことで体が自分の望んでいないやり方で働いたことが、声のかすれや大きな音を立てる呼吸が起こる原因となるメカニズムだったのです。特に頭・首・背中の使い方が体の働き方に第一に大きな影響を与えていることを認識し、これが自分自身の使い方における「プライマリーコントロール 」(体の使い方における一番大切なところ、くらいの意味です)だと考えました。
感覚よる認識の不確かさ
しかし、試してみたところ、声や体に与える影響は頭を後ろに引いていた時とほぼ変わりません。同じように喉頭を圧迫していたのです。何が起こっているのか?自分の動きをより詳しく観察するため、アレクサンダーはさらに2枚の鏡を追加します。鏡の中の自分を何度も観察することで、アレクサンダーはさらに2つの発見をします。
インヒビションとディレクション
アレクサンダーテクニークの広がり
アレクサンダーが舞台に戻ると、同じような問題で苦しんでいた俳優仲間の多くが彼の助けを求めて、彼のもとを訪れるようになります。アレクサンダーは自分のテクニークを他の人々に教え始めました。アレクサンダーが声や呼吸器の不調を治したというニュースは瞬く間に広がります。医師たちもまたアレクサンダーに患者の何人かを紹介し始めるようになっていきました。
アレクサンダーは、言葉による説明のみでなく、手を使って優しくガイドすることでテクニークを伝えていきました。彼は、多くの人々が抱える問題の根源にある原因となっている習慣に気がつき、それを改めるのを助けたのです。
教え始めてしばらくした後、親交のあったある医師は、アレクサンダーの活動に大きな可能性を見出し、テクニークをより多くの人々に伝えるため、ロンドンに行くようアレクサンダーを説得しました。1904年の春、アレクサンダーはロンドンに向けて出航します。同年末にロンドンに到着したアレクサンダーは、まずはビクトリア・ストリート、後にロンドン中心部のアシュレイ・プレイスにオフィスを構え、そこでテクニークを教え続けました。1932年には同地でアレクサンダーテクニークの教え手を育てるための「教師養成コース」をスタートさせます。1955年10月に亡くなるまで、様々な人々にテクニークを教える、テクニークを伝える教師を養成する、5冊の本を出版するなど、テクニークを発展させ、人々へと広げていきました。
アレクサンダーテクニークの原理
アレクサンダーテクニークの基盤には、F. M. アレクサンダーが自分の問題を克服していったプロセスや経験があります。アレクサンダーは① 自分の問題に関する責任を引き受け、②自分自身のために発見を繰り返す中でテクニークの原理を見つけ、自分の問題を改善していきました。煎じ詰めると、アレクサンダーテクニークとは、刺激に対する自分の反応を認識し、変えることで自分の振る舞いや行動を変えるための技術とも言えます。
アレクサンダーが自身の経験を通して得たこの発見がアレクサンダーテクニークが大切にしている原理の大元にあります。アレクサンダーはテクニークを人々に伝える中で、生涯にわたってこの最初の発見を吟味し、アップデートしていきました。
上に記したストーリーでアレクサンダー自身の発見を追ってきましたが、ここで改めてアレクサンダーテクニークの代表的な原理をまとめます。
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1. 習慣の強い力についての認識 (Force of habits)
2. 身体・精神・情動の一体性 (Body-Mind-Emotion Unity)
3. インヒビション (Inhibition)
4. ディレクション (Direction)
5. 感覚による認識の不確かさについての認識 (Faulty Sensory Perception)
6. プロセスを考えず結果だけを追い求める傾向の認識 (End-gaining)
7. プライマリーコントロール (Primary Control)
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アレクサンダーテクニークを学ぶとは、これらの原理を理解し、日々の生活に活かすことです。
「アレクサンダーテクニーク教師」とは、これらアレクサンダーテクニークの原理に沿ってアレクサンダーテクニークを伝え、人々がアレクサンダーテクニークを学ぶ手助けをする職能を持つことを示す資格だと言えます。
アレクサンダーテクニークに関する科学的研究
アレクサンダーテクニークが世の中に広まってから既に100年以上が経過しています。その中で、アレクサンダーテクニークに関する様々な研究が行われてきました。そもそもアレクサンダーテクニークで行っているのはどういうことなのか、アレクサンダーテクニークの効果とは、など観点は様々です。ここではアレクサンダーテクニークに関する科学的な研究についてまとめてみたいと思います。
アレクサンダーテクニーク研究の歴史
20世紀前半には、まずオーストラリア、次いでイギリスで、アレクサンダーテクニークが本当に効果的であると確信する医師が増えていきました。これらの医師たちは、自分の個人的な体験やテクニークが患者に与えた効果を見て、アレクサンダーテクニークの力を信用するようになりました。
アレクサンダー・テクニークに関する最初の医学的研究が行われたのは、1940年代後半になってからのことである。アレクサンダー・テクニークの医学的研究は、英国ロンドンのガイズ病院のリウマチ専門医であり、自身もアレクサンダーテクニーク教師であったウィルフレッド・バーロウ博士によって行われました。その内容は彼の著書『The Alexander Principle』に詳述されています[3]。
最後に少し話はそれますが、1973年にノーベル医学生理学賞を受賞したニコラス・ティンバーゲン教授は、アレクサンダーテクニークに感銘を受け、ノーベル賞受賞スピーチのおよそ半分を割いてアレクサンダーの研究に言及しました。スピーチの中で彼はアレクサンダーテクニークを先述したバーロウ博士の研究を引用しながら紹介しました[2]。
参考資料
アレクサンダーテクニーク について語られているのはファイル122ページから。
最近は、ランダム化比較試験を用いたアレクサンダーテクニークの効果の検証も行われています。
- P. Little et al.: "Randomised controlled trial of Alexander technique lessons, exercise, and massage (ATEAM) for chronic and recurrent back pain", British Medical Journal 2008; 337:a884 https://doi.org/10.1136/bmj.a884 (Open Access)
2008年に発表された本研究では、アレクサンダーテクニークのレッスン、エクササイズ、マッサージの3つの介入方法について慢性および再発性の腰痛への影響がランダム化比較試験を用いて評価されました。研究の結果は、アレクサンダー・テクニークのマンツーマンレッスンを受けることが長期的な利益につながることを明確に示していました。試験開始から1年後、24回のアレクサンダーテクニーク レッスンの後、痛みを感じる日数が対照群と比較して大きく減っていたのです(対照群が1ヵ月あたり21日であったのに対し、レッスンを受けた群は3日、と86%の減少が見られました)。
また、この論文の著者らは、レッスンを受けることによる長期的な利益は、注意やハンズオンによるタッチからくるプラシーボ効果とは考えにくく、日常生活におけるアレクサンダー・テクニークの積極的な学習と応用によるものである可能性が高いと結論しています。また、この試験でアレクサンダー・テクニークのレッスンを受けた288人の参加者の誰からも副作用の報告はなかったことも付け加えておきたいところです。
- J. Woodman: "Self-efficacy and self-care-related outcomes following Alexander Technique lessons for people with chronic neck pain in the ATLAS randomised controlled trial", European Journal of Integrative Medicine 2018, 17, 64-71 https://doi.org/10.1016/j.eujim.2017.11.006 (Open Access)
上記の研究と同様の研究が慢性的な首の痛みについても行われており、アレクサンダーテクニークによって長期的な改善が得られていると報告しています。
気をつけなければいけないのは、アレクサンダーテクニークは教育活動であり、治療行為ではない、というところです。それでも、アレクサンダーテクニークによる間接的なメリットについてこのような科学的な検証が行われ、実際に良い結果が得られることが示されているというのは、まだまだ研究が必要なのは間違いありませんが、心強いことです。
その他、私が把握しているアレクサンダーテクニーク関連の研究論文を以下にまとめておきます。もし他にもご存知の方がおられましたら、ご教授いただけると助かります。
購入の必要あり
- M. O'Neill et al.: "Effects of Alexander Technique training experience on gait behavior in older adults." J Bodyw Mov Ther. 2015 Jul;19(3):473-81. https://doi.org/10.1016/j.jbmt.2014.12.006
- M. Gleeson et al.: "Can the Alexander Technique improve balance and mobility in older adults with visual impairments? A randomized controlled trial." Clin Rehabil. 2015 Mar; 29(3):244-60. https://doi.org/10.1177/0269215514542636
- C. Stallibrass et al. : "Randomized controlled trial of the Alexander Technique for idiopathic Parkinson's disease." Clinical Rehabilitation. 2002;16(7):695-708. https://doi.org/10.1191/0269215502cr544oa
.
オープンアクセス
- Tarr J. "Educating with the hands: working on the body/self in Alexander Technique." Sociol Health Illn. 2011 Feb;33(2):252-65. https://doi.org/10.1111/j.1467-9566.2010.01283.
- H. MacPherson et al.: "Alexander Technique Lessons, Acupuncture Sessions or usual care for patients with chronic neck pain (ATLAS): study protocol for a randomised controlled trial". Trials. 2013 Jul 10;14:209. https://doi.org/10.1186/1745-6215-14-209
- H. Essex et al.: "An economic evaluation of Alexander Technique lessons or acupuncture sessions for patients with chronic neck pain: A randomized trial (ATLAS)." PLoS One. 2017 Dec 6;12(12) https://doi.org/10.1371/journal.pone.0178918
参考文献
このページの最後に、アレクサンダーテクニークを学ぶために有用な書籍をいくつか紹介します。
F. M. アレクサンダー自身の著作
F. M. アレクサンダーは1955年に亡くなるまでに5冊の本を出版しています。しかし、初期の本が拡大版として1冊にまとめられていることもあり、今日ではアレクサンダーが書いた本は4冊というのが一般的な考え方です。
アレクサンダーの本を読むのはテクニークを学ぶ上で非常に重要です。しかし、アレクサンダー自身の文章がかなりとっつきにくいこと(これは英語話者にとっても同じだそうです・私の友人たち談)、私から自信を持ってオススメできる日本語訳が販売されていないことなど、紹介する上での難しさもあります。ただ、最近になってMouritzから出版されているものはkindle版も出版されたため、入手自体はかなり容易になりました。出版社から取り寄せるしかなかった頃と比べるとありがたいことです。値段も手ごろです。興味のある方にはぜひ読んでいただくことをオススメします。
以下はどれも英語での原著のリストです。読んでみたいけど英語だと・・・という方がいらっしゃれば、もしよければ相談いただければと思います。私の方でお力になれることもあるかもしれません。
- "Man's Supreme Inheritance" (Mouritz)
1910年に出版されたF. M. アレクサンダーの最初の著作です。現在普及しているMouritz版は、1910年に出版された"Man's Supreme Inheritance"、その後、1911年に発表された"Addenda"と1912年に発表された"Conscious Control"とを合わせた拡大版として1918年に出版された本がベースになっています。残念ながら読みやすい本とは決して言えない上、当時の状況へのコメントも多く掴みづらいところもあるでしょうが、アレクサンダーテクニークの基本的な考えがなんとか伝えようとしている意欲的な一冊です。個人がその振る舞いや行動を如何に変えるか、を大きな視点から議論しているのも特徴です。
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- "Constructive Conscious Control of the Individual" (Mouritz)
1923年に出版された2冊目の著作です。アレクサンダーの著作の中では最も1冊の本としての構成や構造がしっかりした本だと個人的には思います。その意味で比較的読みやすい一冊でもあります。この本では一貫して個人が持つ感覚による認識能力の重要性、それが狂ってしまっていることによる問題点について4つの観点から議論しています。F. M. アレクサンダーのテクニークに関する考えを理解する上で非常に重要です。私としては、タイトルにある「個人に備わる (of the individual)」というところにテクニークに対するアレクサンダー自身の思いを強く感じます。
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- "The Use of the Self" (Orion Spring)
1932年に出版された3冊目の著作です。本作の第1章「テクニークの発生 Evolution of a Technique」はテクニークのベースとなったアレクサンダー自身の経験をつぶさに記録した回顧録になっており、非常に貴重です。アレクサンダーの著作に初めて挑戦する方にはまずこの本の第1章を読むことをオススメします。また、ゴルファーと吃音者とのワークというケーススタディが書かれているのも特徴で、より具体的な形式でアレクサンダーの考えややり方を学ぶことができます。「The Self」「Use」といった今日のアレクサンダーテクニークを理解する上で書かせない概念が展開され、それをベースに議論が進められており、アレクサンダーの眼差しの先に何があったのかを理解する助けになります。Orion Spring版に載っているロンドンのアレクサンダーテクニーク教師アンソニー・キングスレイの書いた導入文も非常に読み応えがあります。
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- "The Universal Constant in Living" (Mouritz)
1941年に出版された4冊目にして最後の著作です。前作でテクニークについて説明し尽くしたと感じていたアレクサンダーが読者のリクエストに応える形で書き始めた本のため、テクニークに関する様々な要素が網羅された包括的な内容になっています。特に、テクニークに関する説明はこれまでの経験の積み重ねにより非常に洗練されており、アレクサンダーテクニークの基本概念を一望するにはこの本の第1章、第2章、第5章を通読するのも非常に有用です。アレクサンダーが、inhibition, non-doingという「今していることをやめる」という点に重きを置いてテクニークについて記しているのもこの本の特徴だと個人的には思います。アレクサンダーは1955年に亡くなっているため、この本を出版して以降のテクニークの発展について彼自身の文章では記録が残っていません(他のアレクサンダーテクニーク教師の著作にはいくらか言及があります)。その点でも非常に重要な1冊です。
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- "Conscious Control" (Methuen & Co LTD)
1912年に発表されたConscious Controlのオリジナル版です。現在の版の"Man's Supreme Inheritance"にはこの内容が少し改訂されたものが収録されています。短い本なこともあり、比較的読みやすく、アレクサンダーの初期の考えを知る上では入りやすい一冊です。
アレクサンダーテクニークについてあまり知らない方向け
ここではアレクサンダーテクニークの入門書をいくつか紹介します。どれもあまり知らない方向けに書かれた優れた本ですが、これらはレッスンを受ける前、受けた後の補助教材としての読むのが良いと思います。
- Barbara Conable, William Conable: "How to learn the Alexander Technique"
アレクサンダーテクニークを特に身体的な面をスタートに解説した良書です。とてもわかりやすく書かれていると思います。著者であるバーバラ・コナブル、ウィリアム・コナブルはアレクサンダーテクニークを学ぶ助けになるメソッドの1つである「ボディ・マッピング」の提唱者でもあります。身体的な面からアレクサンダーテクニークに入りたい方にオススメです。『アレクサンダー・テクニークの学び方: 体の地図作り』というタイトルで日本語にも訳されています。
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- Micheal Gelb: "Body Learning: Introduction to the Alexander Technique"
世界的に広く読まれているアレクサンダーテクニークの入門書の1つです。著者自身が持っていた「アレクサンダーテクニークとは何か?」という疑問に答えるために書かれた本であり、テクニークに関する基礎的な考えが丁寧に解説されています。この本も『ボディ・ラーニング: わかりやすいアレクサンダー・テクニーク入門』というタイトルで日本語に訳されています。
Link: (英語版) https://amzn.asia/d/8IMMcw6 (日本語訳) https://amzn.asia/d/7ebMwYZ
- Richard Brennan: "Alexander Technique Manual"
こちらも世界で様々な言語に翻訳され読まれているアレクサンダーテクニークの入門書です(なぜか日本語版はありません・・・)。アレクサンダーテクニークの基本的な考え方や日々の生活、スポーツへの応用、妊婦さんのための応用など幅広い内容をカバーした良書です。写真の数も多くとてもわかりやすいです。私が習った先生の本ということもあり、入門書の中では私が一番よく読んでいる本です。アマゾンにはハードカバー版しか見当たりませんが、2018年に出たソフトカバー版もあり、そちらの方が扱いやすくオススメです。
Link: (ハードカバー版) https://amzn.asia/d/05KGHyw (ソフトカバー版) https://www.alexander.ie/books.html
- Richard Brenann: "Alexander Technique Workbook"
こちらも同じ著者の入門書ですが、この本は読みながらできる様々なワークが書かれているのがポイントです。本を読み進めることで、アレクサンダーテクニークの基本を学びながら、セルフワークを行うことができます。この本には日本語訳もありまして、『アレクサンダー・テクニーク完全読本』というタイトルで出版されています。
Link: (英語版) https://www.alexander.ie/books.html (日本語版) https://amzn.asia/d/fIuMwif
アレクサンダーテクニークについてさらに深めたい方向け
アレクサンダーテクニークのレッスンを受けたことのある方やもっと深く知りたい方、アレクサンダーテクニークの応用に関する具体的な話を知りたい方向けの本をいくつか紹介します。とても奥深く、面白い本ばかりです。
- Micheal Bloch: "F. M., The Life of Frederick Matthias Alexander"
F. M. アレクサンダーの生涯を追った伝記です。幼少時代からアレクサンダーテクニークの誕生やその後の発展や変遷をアレクサンダー自身の人生の出来事を追いながら辿ることができます。
Link: https://amzn.asia/d/ft8P2cR
- Patrick. J. Macdonald: "The Alexander Technique as I see"
F. M. アレクサンダーから直接指導を受けた第一世代と呼ばれるアレクサンダーテクニーク教師であるパトリック・マクドナルドによるアレクサンダーテクニークの解説です。「なぜテクニークを学ぶのか」「テクニークを教えるとはどういうことか」など幅広いテーマにわたって考えが述べられた必読本です。『アレクサンダー・テクニーク ある教師の思索』というタイトルで日本語版も出版されています。私も愛読しています。英語版は残念ながらなかなか手に入りにくく、私は学校のライブラリで目を通した程度。英語版を入手できるところを探しているところです。
Link: (英語版) https://amzn.asia/d/bx26wlN (日本語版) https://amzn.asia/d/dOJWZD0
- Wilfred Barlow: "The Alexander Principle"
こちらもかなり古い本ですが、医師でありアレクサンダーテクニーク教師でもあったウィルフレッド・バーロウのアレクサンダーテクニーク(この本の執筆当時はアレクサンダーテクニークという名前はまだなく、タイトルのようにアレクサンダープリンシプルと呼ばれていたそうです)に関する著作です。アレクサンダーテクニークの原理の1つである「使い方が働き方を決める Use affects functioning」にフォーカスし、医師・教師の2つの観点を合わせてアレクサンダーテクニークを解説しています。古い本なこともあり入手はかなり困難ですが、写真や図による説明がわかりやすく、私は結構好きな1冊です。
Link: https://amzn.asia/d/aTlYRXI
- Marjory Barlow: "An Examined Life"
F. M. アレクサンダーの姪にして、第1世代アレクサンダーテクニーク教師のひとりであるマージョリー・バーロウのインタビューで構成された一冊です。アレクサンダーテクニークについて、F.M.アレクサンダーとの経験や自身の教育経験から実にたくさんのことが話されています。どれも非常にわかりやすくアレクサンダーテクニークを理解する助けになります。また、巻末に収録された2つのF. M. アレクサンダー記念講演は、コンパクトにまとまっていながら、アレクサンダーテクニークの真髄を伝える素晴らしい内容だと思います。
Link: https://mouritz.org/shop/index.php?route=product/product&product_id=128
- Walter Carrington & Sean Carey: "Personally Speaking"
同じく第1世代のアレクサンダーテクニーク教師のひとりであるウォルター・カーリントンのインタヴューが収録された一冊です。アレクサンダーテクニークの始まり、内容、そして、アレクサンダーテクニークを教えるということについて、詳細に語られた必読書です。私も何度も読み、勉強しています。
Link: https://mouritz.org/shop/index.php?route=product/product&path=18&product_id=16
- Pedro de Alcantara: "Indirect Procedure: A Musician's Guide to the Alexander Technique"
こちらは音楽家向けのアレクサンダーテクニークの入門書です。入門書とは言うものの、本書の前半では非常に密にアレクサンダーテクニークの重要な概念が解説されており、たとえ音楽をやっていなくてもとても参考になります。後半部分は音楽家がアレクサンダーテクニークをどのように応用していくか豊富な具体例を使って説明されています。『音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門』と言うタイトルで邦訳されてもいます。
実はこの本、私が人生で初めて手にとったアレクサンダーテクニークの本です(日本語版を読みました)。当時は残念ながらあまりピンとこなかったのですが、今になって読むと説明の一つ一つに深くうなづける一冊です。
Link: (英語版) https://amzn.asia/d/316rM1y (日本語版) https://amzn.asia/d/h3vsvq5
- Missy Vinyard: "How you stand, how you move, how you live"
アメリカのアレクサンダーテクニーク教師によるアレクサンダーテクニークの解説書です。レッスンでのやりとりが具体例として豊富に盛り込まれているのが特徴です。レッスンで起こったことを参照ながら説明を読み、それに続くセルフワークを行うことで、アレクサンダーテクニークについて学ぶことができるよう構成されています。私が特に面白いと思ったのは、ハンズオンについて書かれた部分です。21章ではハンズオンのトレーニングについてステップを追って書かれており非常に興味深いです。
Link: https://amzn.asia/d/0jXmxCw
- Richard Brenann: "Back In Balance"
ここからは3冊、私の先生の本を紹介します。1つ目のこの本は腰痛をテーマにした本です。リチャード自身がひどい腰痛・坐骨神経痛に長年悩まされていた中でアレクサンダーテクニークに出会い、それらを改善したという経験もあり、腰痛や首・肩の痛みなど今日の社会に広くみられる問題を切り口にアレクサンダーテクニークについて非常に平易な語り口で解説した一冊です。第3章では今日の社会が育んでいる習慣の1つとして「座ること」について語っており、とても興味深いです。
Link: https://amzn.asia/d/a2PVp34
- Richard Brenann: "Change Your Posture, Change Your Life"
こちらは「姿勢」を切り口にアレクサンダーテクニークを平易に紹介した一冊です。実際はどうあれ、アレクサンダーテクニークは「姿勢」とともに語られることが多いです。この本では姿勢という「習慣」が日々の生活にどのように影響しているか、そして、それをどうアレクサンダーテクニークで改善していけるかがわかりやすく解説されています。タイトルをそのまま翻訳すれば『姿勢を変えて、人生を変えよう』となるでしょうか。アレクサンダーテクニークが持つパワーを伝える一冊です。
Link: https://amzn.asia/d/0wZdXJx
- Richard Brenann: "How to Breathe"
こちらは「呼吸」をテーマにアレクサンダーテクニークを紹介した一冊です。F. M. アレクサンダーが声と呼吸の問題を克服していく過程でテクニークを発展させたことから、アレクサンダーテクニークと呼吸は切っても切り離せないトピックです。アレクサンダー自身がテクニークを教え始めた当時「Breathing man 呼吸専門家」と呼ばれていたように、アレクサンダーテクニークは人々の呼吸を改善するためのテクニークとして始まったとも言えます。この本では自然な呼吸とはどのように働いているか、呼吸に関する誤った考え方、どのようにアレクサンダーテクニークの原理を呼吸に適用するか、といった点に焦点をあて、わかりやすく解説されています。水彩画風の挿絵もとても美しいです。この本は『身体のデザインに合わせた自然な呼吸法 - アレクサンダーテクニークで息を調律する』というタイトルで日本語に訳されています。
Link: (英語版) https://amzn.asia/d/0wZdXJx (日本語版) https://amzn.asia/d/fBwq5gK